木部の塗装について

木部用塗料

木部に対する塗装の目的は、木部のもつ美しい地肌を生かして保護する透明塗装と、逆に木肌を隠ぺいしてなおかつ、保護することを目的とした不透明塗装の2つに大きく分類することができる。
ゆえに、使用される塗料もそれぞれの仕上げと素地である木材の材質と使用される部位等において要求される塗膜性能に応じて選択しなければならない。
不透明塗料については、金属面に用いられるアルキッド樹脂塗料を中心に油変性型の各種合成樹脂エナメルが用いられており、ここでは、木部を中心に用いられる透明仕上用の各種のワニスおよびクリヤーについて示す。

木部に用いられるクリヤーおよびワニスの違いであるが、目的が同じであり、クリヤーとはラッカーのみに用いられ、他の油性、合成樹脂のいずれを問わずワニスといわれている。木部に用いるワニスの種類は非常に多くその品種があるが、最近では建築において木部の使用が減少の傾向にあり、使用されている塗料の種類も少なくなっている。

油ワニス

油ワニスは、各種の天然樹脂や加工樹脂と乾性油を加熱融合して重合し、それに乾燥剤を加え溶剤に溶解したものである。
油ワニスは、油と樹脂量の比率によって、種類が分類でき、それぞれ、短油性ワニス、中油性ワニス、そして長油性ワニスとなる。

短油性ワニスは一般にゴールドサイズといわれ、との粉を練り合わせて、木部の下地剤や目止め剤として用いたり、ワニス仕上げの下塗用として用いられていたが、最近はほとんど使用されない。

中油性ワニスは、コーパルワニスといわれるもので代表されるが、コーパルワニスの名はコーパル樹脂の使用が多いため付けられたが、エステルガムなども用いられる。
一般に屋内用ワニスの上塗用として用いられ、半つや、つや消しなどのワニスを作ることができる。
しかし、このタイプのワニスも、各種合成樹脂タイプのワニスの開発によりほとんど用いられていない。

長油性ワニスは開発当時は船舶用塗料として、船の帆柱(スパー)使用されているところからスパーワニスとよばれ、現在では、建築の木部の内外用として用いられている。
しかし油ワニスの中では色が淡色なワニスで耐水性もすぐれているが、乾燥速度のおそい点が難点であるにもかかわらず、現在でも一般木部用として使用されている。

酒精ワニス

天然樹脂(セラックが主であるが)をアルコールを主成分とした、主溶剤に溶解したもので、油ワニスの揮発酸化重合乾燥と違い、単に揮発乾燥により造膜するものである。
酒精ワニスはセラックニスによって代表され、天然の昆虫の分泌部をアルコールに溶解したもので、漂白したセラックを用いた白ラックニスが主でがるが、塗膜は速乾燥性であ

るが、耐水性が不良のため最近では、油性ペイント塗装などの木部の節止め、やに止め、しみ止め等の下塗りに用いられる程度である。

各種合成樹脂ワニス

ワニスには、各種合成樹脂を展色材としてそれぞれの特性を生かして開発されている。

①フタル酸樹脂ワニス

中油性および長油性のフタル酸樹脂を石油系溶剤に溶解してできたワニスで、油ワニスに比較し乾燥も早く耐候性が良好で、木部仕上げ用として用いられる。
この場合油変性に用いる油の種類によって乾燥性、保色性、などの性質が変化する。

②1液型ウレタン樹脂ワニス

1液型ウレタン樹脂ワニスには、油変性(ウレタン化油)と湿気硬化型がある。

◎油変性型ワニス
イソシアネートで変性した乾性油が展色材となる1液型ウレタンワニスで、硬化は、ナフテン酸などの乾燥剤の力をかり、空気中の酸系と酸化重合反応によって乾燥するものである。
性能面では2液型ウレタンワニスと比較すると硬度、耐溶剤性、耐摩耗性は劣るが、作業性の面で、はけさばき性がよく可使時聞がないなどですぐれており、性能面においても他の種類のフタル酸樹脂ワニスなどに比較して、乾燥性、光沢、耐候性、耐摩耗性などにすぐれている。
用途としては建具、一般の床等に用いることができる。

◎湿気硬化型ワニス
ウレタン樹脂の中で遊離のイソシアネート基を含む初期重合体の1液型で、塗装することによって、このイソシアネート基が大気中の水分と反応し、架橋反応を生じ硬化するものである。
塗膜性能は2液型のウレタンワニスと同様で、すぐれた性能を有している。
硬化が大気中の湿度との反応であるため、施工上において、湿度の影響が大きし高温多湿、雨期など湿度が85%以上になると完全に発泡、白化が塗膜に生ずる。また、保管には安全密聞が必要である。
用途としては、耐摩耗性がすぐれている点から、床用として多用されている。

③2液型ウレタンワニス

2液型ウレタンワニスはエナメルと同様に、イソシアネートとポリオールとの反応によるウレタン結合の生成による硬化である。
特長としては、木部への付着性にすぐれ、たわみ性があるため、塗膜に割れが生じにくく、耐摩耗性、耐薬品性にすぐれ、高度の光沢を有する。
欠点としては2液混合による可使時間の制約や、一度に厚塗りすると発泡しやすい、黄変しやすいなどがあげられる。
しかし、酸硬化型のアミノアルキッド樹脂ワニスに比較し耐劣化性にすぐれており、用途面としては、高級家具、ウインタースポーツ用品、体育館の床用など高度の性能を要求される面への応用が多い。

④ポリエステル樹脂ワニス

ポリエステル樹脂は、不飽和多塩基酸であるマレイン酸を用いてつくった不飽和アルキッド樹脂とスチレンモノマーのようなピニル系モノマーとを、過酸化ベンゾイルのような重合触媒を用い反応促進剤であるオクトイン酸コバルトなどを加え、架橋反応させ硬化させたものである。
硬化剤となるスチレンモノマーは重合触媒を加えないと反応せずに、溶剤として不飽和アルキッド樹脂を溶解したワニス状態となっており、塗装時に重合触媒と反応促進剤を加えると溶剤であったスチレンモノマーが硬化剤に変わり、反応硬化を進めていく。
ゆえに、ポリエステルワニスは、揮発成分が理論的にはゼロであり、すべて有効成分として塗膜に残るため、厚膜な塗膜を形成し、硬度の高い、耐水、耐酸、耐汚染性のすぐれた塗膜を形成する。
ポリエステルワニスはパラフィンを微量加え塗膜の表面に浮かせて、硬化反応時に空気と接することを避けさせ、仕上げ時にボリァシングして除去し光沢を出すタイプと、パラフインを使用しないポリッシングタイプとがある。
用途は高級家具、楽器などに用いられる。

⑤アクリル樹脂ワニス

熱可塑性のアグリル樹脂によるワニスであり、他の多くの樹脂ワニスと異なり完全に無色に近く、透明であり、白木仕上げにおける汚染防止用のクリヤーとして用いられる。

⑥クリヤーラッカー

クリヤーラッカーは、ニトロセルローズを主成分としてこれに、各種樹脂、可型剤等を塗膜成分として加えたものであり、最も大きな特性はあらゆる塗料中で最も乾燥が早く短期間で仕上げが可能なことである。
形成された塗膜は美装性にすぐれ、光沢を有する仕上げとなるが1回塗りの塗膜厚が薄いことも第ーであり、仕上げるのに工程数が多くいることで、最近では、建築工事におけるクリヤーラッカー仕上げが減少している。
用途としては、高級木工品から普及木工品』こいたるまで広範囲に用いられ、その仕上がり精度は主に塗工程によって決定づけられる。