塗装の素地調整

無機質系素地の特性と素地調整

無機質系の素地はセメントを主成分とするコンクリート、モルタルによって代表され、その特性は各種の種類によって千差万別であり、これらの特性を十分につかみ、素地調整を行なわないと良好な結果は得られない。

素地調整はそれぞれの素地を建築現場において成形されるものと、工場生産された成形品を現場で取り付けるものとに分けた説明を次に加える。

現場施工素地の特性とその素地調整

1.現場施工素地の種類と特性

現場施工素地とはいわゆる一般には湿式工法といわれる方法で、現場で流動状態にあるコンクリート、モルタルなど湿式材料を現場で硬化させたものである。

湿式工法によって構成される素地はその表面の特性に必ず水分が存在すること、ほとんどがアルカリ性物質であること、の2点が基本にあげられる。

湿式工法によって作られる素地の種類は、セメントを結合材としたコンクリート、モルタル系と各種プラスターを結合材としたプラスター系とに大きく分類でき、これらの種類は、コンクリート系においてもその組成中の骨材の種類、水セメント比などによって素地としての表面特性が大きく異なり、それぞれに対応した素地調整が必要である。

これら特性において、塗膜面に与える影響が大なるものばかりであるが、最近の事故の傾向からみると、特に外部塗装を中心に素地の含水率が第1次的に影響を与え、問題発生の発端となり、これに2次的に他の特性が交互的に作用し拡大していく傾向が大きい。

合水率については過去に多くのデータが発表されているごとしコンクリートだけを取り上げても、コンクリートの製作方法によっても大きく異なり、特にPCコンクリート部材(PCパネル〉における事故が発生しやすい。

すなわち、PCパネルの製造目的が、生産の合理化に基づく早期のコンクリート成形品の生産であり、短期に目標強度を発生させ、次の建築生産工程に移行できるスケジュールとなっている。

しかし、この建築生産合理化システムの流れの中には、塗装関係をはじめとする仕上材施工に対する配慮がなされていることは非常に少ない。

コンクリート成形品であるPCパネルの生産の立場と建築生産の立場においては、目標の強度のコンクリートが成形されたことで、建築本体に取り付けることが第ーとなり、材齢をおかずに仕上げ工程を強行し、合水率を低下させる材齢をまたず塗装等の仕上げを施してしまう。

この場合に含水率はPCパネルはそれ自体が水密性であり、また、骨材の種類によっては合水率の低下が極度におそいものがあり、たとえば1週間程度の脱型後材齢であっても、その含水率は低下していない。

この状態で塗装するならば、初期の段階では塗膜とコンクリートの接着面が結露状態になり内部水が集まり、接着不良を生じ、ふくれを発生するものから、はく離にまで発展してしまうものもある。この現象は、単にPCパネルのみでなく、一般のコンクリート面においても生ずるものであり、これらがひび割れ部分に発生するエフロレッセンスとか、このエフロレッセンスの影響による塗膜のふくれ、はがれ等の原因となり、いずれも含水率に対する管埋不十分からアルカリ性の物質である水酸化カルシウムと作用して生ずる現象である。

特に、コンクリート、モルタル用塗料におけるJISをはじめとする耐水、耐アルカリ性のテスト方法は主に浸液法であって、外部からの水、アルカリの作用を確認する内容であって、素地自体からの水、アルカリに対する影響の確認ができていないのが一般的である。

しかし、事故の発生は短期、中期の経過においてはほとんどが、素地に起因することであり、塗料の選択、塗装の施工の場合に、これらの塗料の特性とシーラーを含めた塗装系の選択を十分に注意する必要がある。

セメントを主成分とした素地の特性は大なり小なり同様な特性をもっているが、プラスターの場合、最近は塗装するケースが比較的少なくなってきているが、プラスターに石こうを用いたものとドロマイトを用いたものの2種類があり、ひと口にプラスターと表現しでも、その特性は非常に異なったものであって、石こうプラスター系は、硬化も早く、合水率も、またアルカリ度も比較的早く低下する。ー方、ドロ7イトプラスターは、CaOMgOが水との反応によってCa(OH)z・Mg(OH)zの強アルカリ性物質となり、これが空気中のCOzとの反応する気硬タイプであるため、その反応は非常におそし強アルカリの素地であり、ひび割れも多く、塗装素地としては、むずかしいものの1つであり、プラスターの種類を十分に確認した上での施工が必要である。

これらアルカリ性素地がなぜ塗料を施工する場合に注意すべきかであるが、一般に耐アルカリ性のない塗膜とは油性系、油変性系、エステル結合系などがあげられるが、これらはいずれもアルカリ性を示す塩類と化学反応を生じ各種の金属石けんを形成し、水i容性物質に変化してしまうことによって生ずる塗膜の劣化現象となるためである。

2.現場施工素地の素地調整

現場施工を中心に形成される湿式工法による、素地の塗装に適する素地へと調整する方法としては基本的には、それぞれの素地表面の特性を修正する必要があるが、材齢を経過させることによって解決していく水分、アルカリの問題、表面の不十分な状態を平坦化などの修正によって解決する表面粗さ、ひび割れ、また均ー化し低下させる表面吸収性、除去操作によって処理する表面付着物、および補強効果によって解決するぜ、い弱素地などがあげられる。

これらの素地調整の順序は素地の種類によっても異なるが、素地の種類、程度、仕上材の種類、程度等により選択して工程を組み立てていく。

合水率、pHの低下の状態の確認は、齢管理によることが一般的であるが、水分の場合は多くの要因が作用するため、なんらかの方法で含水率を確認することが必要である。

合水率の測定には含水率測定器があり、現場で施工するためその正確度については多くの意見があるが1つの目安としては適当と考えられる。

ただし、これら測定器に高周波誘電率型を用いた一般にいわれているKettモルタル水分計と電気抵抗型のUNTモルタル水分計があり、その含水率測定の方法も深さが異なり、前者は深さ3mm程度まで測定できるとされており、後者はごく表層のみとなっているため、塗装可能な含水率%は前者が10%以下、後者が6%以下と表示していることが多くみられる。測定器がなく、より簡易な確認方法が必要な場合は、ポリエチレンとかサランラップのようなフィルムを30x30cm程度の大きさに四方をガムテープでシールしながら素地面に張り付け、気密状態にしておき、そのフィルム内にたまる水蒸気の結露状態で判断する方法が良い結果を得られる。

アルカリ度については、pHコンパレーターを用いて確認することがごく一般的で、アルカリの問題で事故の発生は直接的には少なくなっている。

表面の状態を修正するための素地調整材については、材料の項で説明を加えたごとく、各種のパテ類が開発されており、適切な材料を用いて施工する必要があり、決して、外部、水がかり部には耐水型といえども合成樹脂エマルションパテを用いてはならない。

事故の発生を招くばかりでなく、発生後の処置において非常に困難な結果を生じてしまう。

表面補強については、シーラーによる方法があげられるが、この場合も先に示したごとし各種シーラーは、いずれの性能についても効果を発揮できるものでないことを確認し、素地の特性に対応した選択をして施工しなければならない。

一般に、シーラーは顔料の含まない低粘度タイプであるが、中には低粘度であっても高濃度のものもあり、そのまま施工すると、シーラー塗膜が含侵せず厚j換を形成することによりかえってはく離を生じやすい結果となるものもあり、仕様書等を十分に確認する必要がある。

表面の吸収性についても、補強と同様にシーラーにその効果を求めている。

表面付着物は素地調整の第1工程とする操作であるが、付着物の種類によってその素地の特性を知ることができ、単に除去するのみでなく、エフロレッセンスの発生状態、型枠離型剤の付着状態などを確認し、除去作業をそれぞれの付着物にマッチした方法で行なわなければならない。

 

素地調整は下地調整とも言われ、塗装工事の見積書に計上されていることが多い。外壁塗装での下地調整はモルタル、サイディングに生じたクラックの補修が代表的である。下地調整をしっかりと行うことでその後塗装したときにクラックからの塗膜の剥がれを抑制できる。外壁塗装の施工事例は外壁塗装横浜.netを参考にするとよいのではないだろうか。塗装施工写真には下地調整の写真もあり参考になった。